さいたま市 岩槻区 動物病院

歯石が付着しやすいワケ

人とワンちゃん・ネコちゃんの口腔内環境には大きな違いが3つあります。
① 口腔内のpHが異なる
② 歯の形が異なる
③ アミラーゼ活性が異なる
上記の違いにより、人とは大きく異なる病態により歯周病が発生します。

特に口腔内のpHが歯石付着に大きな影響を与えます。人の口腔内のpHは弱酸性です。「酸」というと、シュワシュワと物を溶かしていくイメージがあるかと思いますが、これが原因で人は虫歯になりやすいです。
これに対し、ワンちゃん・ネコちゃんの口腔内pHはアルカリ性です。酸性の場合とは逆に唾液が石化して固まり易い環境です。鍾乳石が成長していくイメージをしていただけると分かりやすいと思います。
このpHの違いにより、人では歯垢(食べかす)が歯石(歯垢が石化したもの)になるまで2~3週間かかるのですが、ワンちゃん・ネコちゃんは約3日で変化してしまいます。

おうちで容易に観察できるのは犬歯(牙)周辺の歯だと思いますが、実は歯周病になりやすいのは臼歯(奥歯)です。犬歯は獲物を捕まえる為の歯なのに対し、臼歯は獲物を噛み切る為の歯です。この部分には唾液腺があり、ミネラルを含んだ唾液と歯垢が混ざりやすいため、歯石が付着しやすい環境なのですが、お口を開けないと見ることができないため、なかなか気づいてあげることができないのが現状です。

また、アミラーゼは「でんぷん」を「糖」に変える酵素なのですが、口腔内細菌はこの「糖」を分解し「酸」を発生させます。こうして出来上がった酸が歯を溶かして虫歯になってしまうのですが、ワンちゃん・ネコちゃんはアミラーゼ活性が低いので「でんぷん」から「糖」への変換が起こらず、虫歯が起こるのは非常に稀な状態となります。

歯垢が溜まった状態になると口腔内細菌は増殖を続け、歯肉に炎症を引き起こしながら、緩くなった歯周ポケットの奥へ定着します。このままの状態が続くと、歯根周囲の骨が溶け出し(歯槽膿漏)、行き場を失った炎症産物が溜まることで頬が腫れたり、口の中や外に穴を開けたりして出血・排膿することがあります。

重度な歯周病の場合、歯周病菌は口腔内だけでなく、肝臓や心臓など血液の豊富な臓器に影響を及ぼします。特に心臓弁膜症へのリスク増大は小型犬への大きな脅威となります。顎の骨が解けるほどに進行した歯周病の場合は敗血症に至り命に係わることもありますので注意が必要です。

ワンちゃん・ネコちゃんは人と異なる病態で歯周病が進行していきますが、その予防方法は極めて単純です。それは人と同様に「歯磨きをして歯垢を除去してあげること」です。おうちで歯磨きを続けるのは容易なことではありませんが、長く続けていただくことで、口腔内だけでなく全身の健康を守ることにつながります。おうちでできる歯磨きケアにはいろいろな方法がありますので、どんな方法が適しているかご相談いただければと思います。

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